TriggerPointStaff 
  トリガーポイント研究会Staffのホームページ  
 トリガーポイント用語集
トリガーポイント 東欧やイギリスでの筋骨格系に関する研究の一つとして、筋肉中に食塩水を注入すると遠隔部へ痛みが放散する「関連痛」という現象が知られている。その痛みは頭痛や膝などの痛みに「そっくり」との報告もある。
 他方、食塩水注射なしで関連痛を出す「過敏なスポット」があり、そこへ局所麻酔薬を注入すると痛みを取り除く事ができるとカレッジホスピタル大学のKellgrenが1930年代に報告している。
 20世紀後半に、「過敏なスポット」をアメリカの整形外科医、Steindlerが「トリガーポイント」と名付け、さらにJanet Travell医師が体系づけた。
 その学説を日本の黒岩共一(関西医療大学教授)が発展・革新して、今に至っている。
 我々はトリガーポイントを「感作部位(過敏な部位)」と呼んでいる。トリガーポイントは押圧、
刺鍼するとズンとする知覚=関連痛が生じるところで、異構造接合部(筋・骨/腱・骨接合部)
に形成される事が多い。感作部位(=トリガーポイント)の中で運動器の痛みの原因(発生源)
になった所を発痛部(責任トリガーポイント)と呼んでいる。
責任トリガーポイント トリガーポイントは刺激(押圧・刺鍼)するとズンとするところ(鈍痛)。責任トリガーポイントは刺激すると「私の痛いところに当たった(発生源認知=自発痛がある場合)」、「あの時の痛みだ(同一性認知=運動痛の場合)」と自覚される部位で、痛みの発生源である。
関連痛 刺激すると遠隔部や周囲などに痛み、響き感覚が伝播する現象。トリガーポイントのみに起こる現象ではなく、内臓から運動器に伝播する関連痛もよく知られている。
 痛みの伝導路は痛みしか伝えない。どこが痛いのかは別の神経システムが必要となる。
Where処理(どこが…)できるのは視覚のみである。視覚を伴わない限り(痛い所が見えない
と)、痛いと云うことは分かっても、痛いところは分からないので、痛い所を間違える(錯覚
してしまう)。
発生源認知 痛みを現に感じている状態で、その痛みの発生源を刺激されると「私の痛
いところに当たった」と認知される高次の脳活動を指す。我々はこの認知が、責任トリガーポイントに鍼が当たった時も生じることを観察している。自発痛では痛みの求心性線維が発痛部から神経インパルスを発信中であり、発生源刺激により信号の数が増え、振幅も増大する。これを察知して皮質は発生源が刺激されたと解釈・認知している様に思える。
 また運動痛の場合に責任TPが刺激され、痛みが生じると「あの時の痛み(と同じ痛み)だ」
と知覚する事があり、それを同一性認知と呼んでいる(トラベルは症状再現と呼んだ)。刺激
して今生じた痛みを記憶している痛みと比較するためどうしても曖昧になり、「症状再現」を報告したものの自信のない患者が多い。
運動痛 立つ、座る、曲げる、伸ばすなど体を動かした時に生じる痛み(自発痛の増悪と
は全く別物)。中空臓器や運動器の痛みの特徴で、後者の運動痛はTP治療の適応となる。
軽い運動によって生じる非炎症性の痛みの受容器が侵害受容器とは考えられず、他の知見と併せて、運動痛は機械受容性疼痛と我々は考えている。
自発痛 体を動かさず、じっとしていても自覚する痛みの事。一般的に「ズキズキする」、「うずく」と表現される事が多い。
 しかし座位においても姿勢維持のための筋収縮は存在し、また仰臥位においても多裂筋
が罹患している場合、その姿勢で収縮して発痛するという現象もあるので鑑別に注意を要
する。
就寝時の痛み(夜間痛は安静時痛と就寝時の痛みを合わせた概念)が真の安静時痛で、横になっているにも拘わらず、どこかが痛ければ炎症・傷害による侵害受容性疼痛が疑われる。
 運動器の自発痛を鎮痛するには、鍼のみでなく消炎鎮痛剤の服用が必要になる。
 収縮痛  筋を収縮させた(縮めた)時に出る痛み。
 短縮痛  筋を他動的に縮めた時に出る痛み(最も痛い)
 伸張痛  筋が伸ばされたときに出る痛み。
 圧迫痛  圧迫されたときに出る痛み。
 痛みの種類 
侵害受容性疼痛 健常な組織を傷害するか、その危険性を持つ侵害刺激が加わったために生じる痛みを侵害受容性疼痛という。(塩酸を手に付けてしまうなどは化学的侵害刺激、包丁で指を切るなどは機械的侵害刺激、火傷をするなどは熱による侵害刺激である。)
直接侵害刺激が加わったために侵害受容器が刺激されて痛むか、組織の損傷により生じた発痛物質が侵害受容器を刺激して痛む。侵害刺激により多少なりとも組織損傷が生ずると続発して発痛物質が産生される。発痛物質には発痛作用があるが、加えて発痛増強作用といって痛みの発生源となる物質・刺激に対する受容体の感受性を高める作用もある。(プロスタグランジンEなど)発痛物質にはブラジキニン、ヒスタミン、アセチルコリン、セロトニン、カリウム、水素イオン、プロスタグランジンE、サブスタンスP、各種サイトカイン、一酸化窒素、リポキシゲナーゼ系代謝産物などがあり、炎症の場では多種の発痛物質が混在・集積し「痛みのスープ」ができ上がり、受容器を感作させ発痛する。運動器の痛みでは骨折や打撲などの外傷がこの痛みの代表であるが、変形性関節症などの慢性の運動器の痛みも一般的にこのカテゴリーに分類されている。前者に異論はないが、後者に関しては「我々の観察」の項目で異論を述べる。
神経障害性疼痛 末梢神経あるいは中枢神経の機能異常による痛みを神経障害性疼痛という。侵害受容器が侵害刺激を受けていないにもかかわらず、末梢神経あるいは痛みの伝導ニューロンの興奮が引き金となって生じる痛みである。特徴的な症状として痛覚過敏(アロディニア)が出現し、「灼けるような、灼熱感のある痛み」、「電撃性で刺すような痛み」、「ビリビリするような痛み」などと表現される日常生活ではあまり経験しないような性質の痛みで難治性である事が多い。末梢神経の損傷(圧迫、絞扼、切断、脱髄)や機能異常による痛みには、三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛、CRPSⅡ,糖尿病性ニューロパチーなどがある。
中枢神経の異常による痛み 中枢神経の異常による痛みは、脳または脊髄に障害があり、末梢の侵害受容器からの入力がなくてもあたかも受容器が強く刺激されたときに生じるような激しい疼痛で、脊髄損傷性疼痛、脊髄空洞症、脊髄癆、脳血管障害後疼痛などがあるが、さらに最近f-MRIなど脳の画像による痛みの研究では下行性疼痛抑制経路の破綻としての線維筋痛症なども中枢性の疼痛に分類されている。
心因性疼痛 明らかな身体的な要因がなく、その発生に心理社会的因子が関与している痛みを心因性疼痛という。
混合性疼痛 いくつかの種類の疼痛が混合したものを混合性疼痛と呼んでいる。神経障害性疼痛と侵害受容性疼痛の要素を併せた疼痛が代表とされるが、神経障害性疼痛と心因性疼痛、侵害受容性疼痛と心因性疼痛の組み合わせなども考えられ、鑑別には注意を要する。
 
我々の観察 運動器の痛みは上記のように一般的には侵害受容性疼痛とされるが我々はそうではないと考えている。刃物で切った傷口や、火傷した部位などを触ると傷害部位であるから心地よさなどなく、「痛い!触らないで!」となる。
運動器の痛みでも急性の外傷の痛み、即ち「肉離れの局所」や捻挫して靭帯の損傷した局
所であればその通りである。
 しかし、慢性の運動器の痛みは腰痛、肩こりなどに代表されるように、むしろ痛むところを押したくなる。それは痛いところを確認したいという欲求に加えて、「痛いところを押すと楽になる」、押すと気持ち良いという事を経験・学習により知っているからである。
 この違いは傷害による侵害受容性の痛みと慢性の運動器の痛みでは性質が違う、もっと
言えば感作されている受容器の種類が違うという事を示唆しているのではないだろうか。

 また、鍼を刺入すると筋、血管内皮細胞を傷害する事から侵害刺激といえが、鍼をする度に必ずしも侵害痛が生じる訳では無い。運動器の慢性痛を訴える患者に、鍼で刺激した
場合も応答する(痛みや発生源認知が生じる)場合とそうでない場合がある。

 主に老人の場合に多いが、鍼を打つという侵害刺激では関連痛、発生源認知が生じない
が、マッサージなどの機械的刺激であればそれらが生じる患者がいる。
 こうしたことから我々は慢性の運動器の痛みは「侵害受容性疼痛」ではなく「機械受容
性疼痛」であると考えるに至った。

 筋・腱・靭帯・骨膜などに存在する機械受容器が頻回の筋収縮や、阻血や炎症などで産
生された感作スープにより過敏化し、機械的刺激のみならず侵害刺激に応答する受容体も
発現する。こうして感作が成立すると今度は同じ刺激で発痛する、これが我々が考える慢
性運動器疼痛の発生メカニズムである。

 上記の記述を踏まえての我々の考える混合痛の代表は機械受容性疼痛と侵害受容性疼痛の混合痛である。これは、自発痛があり、運動によって疼痛が増悪する場合を指す。(この場合の自発痛とは機械受容性疼痛でも生じる姿勢維持に伴う持続的な疼痛は除かれる。炎症性、外傷性の痛みを指す)
 このタイプの混合痛治療には鍼とNSAIDsの併用が必要で、NSAIDsだけでは運動痛に奏
功せず、鍼だけでは自発痛の改善に数か月の時間が必要と思われる。
 この他にも機械受容性疼痛と神経障害性疼痛の組み合わせや、その他の組み合わせも存在するため鑑別には経験の集積が必要である。
NSAIDs 非ステロイド性抗炎症薬の総称。抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤の総称で、広義にはステロイドではない抗炎症薬全てを含む。一般的には疼痛、発熱の治療に使用される「解熱鎮痛薬」とほぼ同義で用いられている。非特異的副作用として胃腸障害、腎障害、肝障害、呼吸器障害、循環器障害などがあり、使用に際しては上記の疾患を有する者や妊婦の場合医師と相談してもらう事を推奨する。
受容器 様々な感覚神経の末梢に存在して、温冷覚や触・圧覚などそれぞれの刺激や物質を感じ取って反応するニューロンを受容器という。受容器の表面にあるセンサーを受容体といい、特定の因子と結合する構造蛋白分子の事である。受容体を刺激する物質をアゴニスト、抑制する物質をアンタゴニストという。特定の因子により反応した受容体が電位を発生させ、それが受容器から神経へと伝達されていく。
運動器の痛みに関しては侵害受容器が関係しているというのが現代医学における通説であるが、それに対して我々は観察の結果、機械受容器が関係していると現段階では考えている。
マスキング 痛みをより強い痛みが覆い隠す現象。AとBの痛みが存在するが、より強いAの痛みしか脳に自覚されない。強い坐骨神経痛のみを主訴としていた患者の坐骨神経痛が改善するにつれ腰痛や肩こりを自覚するようになったなどは、臨床上よく経験する事である。
引き込み現象 最初に多裂筋が発痛し、腰部に自覚的疼痛が生じると、次に腰方形筋、大殿筋が発痛しても腰部の同じ所に痛みを感じてしまい、自覚的には同じ腰痛が続いているだけである。治療過程でしか判明しない事実だが、結構よく観察される。この様に、最初の感覚部位がアトラクタとなり、他の感覚部位が引き込まれ、同調してしまう現象を「引き込み現象」と呼ぶ。こうした神経の振る舞い(カオス的挙動)は膨大なネットワーク素子をもつ脳の中で起こっているとしか考え様がない。
筋硬結  触診で検出される筋のロープ状の硬い部位を索状硬結と呼び、トリガーポイントの指標の一つとされている。
日本では辻井洋一郎教授の創始した「(旧)マイオセラピー」や、医師の行うトリガーポイント注射において「トリガーポイント=筋硬結である」という考え方もあるが、当会では
「トリガーポイント=筋硬結ではない」と考える。
 硬結を持った筋線維の筋・骨/腱・骨接合部や、硬結縁・筋縁最深部の筋外膜・筋周膜に
トリガーポイントが形成される事が多いが、硬結=トリガーポイントではない。収縮による
機械刺激が頻回に及べば、一方で受容器を過敏化し、もう一方では硬結を形成する。受容
器が筋線維ならば、「過敏化した受容器は硬結である」かも知れないが、受容器と筋線維は
同じではない。
軟部組織(筋膜・骨膜・腱・靭帯など)が感作され、発痛すると硬化するが、同様に理解される。
ローカルトウィッチ 局所単収縮反応の事。(LTR=ローカルトウィッチレスポンス)
索状硬結を指で弾いたり、トリガーポイントへの鍼の刺入で生じる筋の局所的な収縮反応
であり、ジャンプサインとともにトリガーポイントの重要な指標とされているが間違いである。
 指標としての重要性は「特異性、特異度」と感度により決定される。
 責任TPを持つ筋に鍼を刺入してLTRが生じ、その際に発生源認知が一瞬生じる事があ
る。つまり責任TPに鍼が当たっていないにも拘わらずLTRが生じている(特異度は低い)。
恐らく収縮で生じた機械的刺激が一瞬間責任TPに及んで発生源認知が生じた為だろう。加
えてTP、責任TPが刺激されれば関連痛(若しくは鈍痛)は必ず生じる。それに比べLTRは3割も生じ無い。この程度の感度では指標にしても意味がない。
トリガーポイント治療 アメリカにおいてはストレッチ&スプレーといってコールドスプレーをしながら筋をストレッチする事で、筋を機械的に引き伸ばしたり、局所麻酔薬の注射が推奨されている。しかしトリガーポイントと硬結の大きさ、分布は一致せず、まして筋全体をストレッチしても硬結が軟化、消退することは殆ど無く、その効果には疑問符が付く。(筋全体のストレッチをしてもTP内包筋線維は伸張されるとは考えにくく、むしろ局所的なマッサージの方がTP内包線維を伸張する。)

また、注射でも鍼でも如何に責任トリガーポイントを正確に刺激するかが肝要である。
 近年の研究においては、局所麻酔薬注入群と鍼刺激群において有意な差はないという報
告もあり、安全性の観点からドライニードリングという鍼の刺入のみの治療も増えている。

我々は鍼灸治療用の鍼を責任トリガーポイントへ刺入し、さらに徒手・ツールによるマッサージを行っている。また、2000年頃より黒岩が責任トリガーポイントの検索法を世界で初めて確立し、かつその手法も日々進化しており、現段階においてトリガーポイント療法の最先端にある。
トリガーポイント検索法 一般的に注射の場合は患者に自覚的疼痛部位を示すように指示して、単にその近傍部に注射をする事が多い。また、Travellの関連痛のパターンに当てはめて、ここが痛い場合はこの筋肉と機械的に部位を決定して治療される事も多い。しかしその検索法では責任トリガーポイントを検索できる可能性は低い。我々は発痛/疼痛動作を運動学的に解析し、そこに先行体験による知見や解剖学的知識を動員し、さらに治療刺激に対する脳活動による認知を活用し検索するという方法を用いている。
    文責 野崎真治
参考文献 痛みと鎮痛の基礎知識 小山なつ著
痛みの考え方 丸山和夫著
 
参考サイト 痛みと鎮痛の基礎知識 www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/pain.html
  copyright©2014 TriggerPoint Research and Apprication  all rights reserved.